ぐしゃりと丸めた原稿用紙の前で亘は焦っていた。
どうしよう。
明日はどう考えたって自分が当てられる番である。
勢いあまってこんなにしてしまった。
仮にも宿題を。
ああ明日提出するのにどうしよう。
そうだ、とクリアファイルを漁る。
半分に折り畳んであったものの、予備の原稿用紙がかろうじて3枚見つかった。
大丈夫。これに書き直せば…。


翌日、亘は何事もなかったかのように作文を読みあげた。
美鶴のように到底上手くは読めないので、自分の書いた文につっかえつっかえしながらも「母について」を何とか読みあげた。


先生は亘の家庭事情を知っているせいか、亘がつっかえつっかえで読みあげる仕草が余計その感情を煽ったようだ。
静かに目を閉じて頷いている。

一昼夜で仕上げた作文の出来としてはアレだけど、どうやら見破られずに済みそうだ。
亘はホッと胸を撫で下ろした。


「美鶴はさ、どうしてカッちゃんにしたの?」
放課後の教室。いつの間にか残っていたのは二人だけだった。
「楽だったから」
美鶴の答えは単純だ。
楽って、亘は腸が煮えくり渡る感覚に襲われる。
「楽ってどういう意味だよ?!」
それじゃあカッちゃんが上手い具合いに作文に利用されてバカにされてるみたいじゃないか。


「楽だぜ。アイツはカラっとしてて裏がないから実に付き合いやすい」
つまり…と美鶴は得意気に言う。
「アイツを表す言葉もポンポン出てくるんだ。ありがたいくらいにな」
…もそれくらい単純だといいのだけど。
「えっ?」
ぼそっと呟いた言葉を亘は聞き逃さなかった。
美鶴ははぁと溜め息を吐く。
 すぐすねるし、早とちりして勝手に突っ走る。
 オマケに大層な焼き餅焼きです…
////「みっ、見てたの?!美鶴!」
「バカ。お前は顔に出るからすぐ分かる」
そこまで言って、少しそっぽを向く。


「……アヤにしろ亘にしろ3枚でまとまる筈がないんだ」
最もそれが数日付けの宿題ではなく、もっと考察期間があったら超傑作を書き出す自身はあるのだが。
「僕のこと、書いてくれたの?」
亘の顔がぱぁあっと顔が明るくなる。
「まとまらなかったって、僕のことも書いてくれたんだ!」
だから…と続けた美鶴には構わず、亘はなぁんだー。へへっ。と笑う。
ばっと美鶴の手を取って亘は言った。
「僕もね、最初は美鶴の事書いたんだ」
「―へぇ、どんなお情けがふんだんに使われてるんだろうな」
もう違うよ。とふくれっつら。
今から読むからね!亘はいそいそとポケットから原稿用紙を取り出す。
しわくちゃになっているものの、きちんと大切に4つに折り畳んでしまわれていた。
―やっぱり捨てることができなかったのだ。
そしてすーっと息を吸って、背筋を正して読み始めた。


「僕の大好きなひとは芦か…」
「ちょっと待て!こんな所で大声で朗読するな!!」
美鶴の声が響く。
それはどんなに甘いラブレターなのか彼には想像できたから。







オワリ

-------< 僕の なひとについて../ 学校っていいね!(何)>



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